昔からある椅子らしい形の椅子、どこかで見た事のあるような何の変哲もない椅子。
作家の個性が強く出ているわけではなく、日常使いの量産品にあるような匿名性の形=アノニマスデザインの椅子です。
部材の線の太さ細さや、その部材の組み合わさりで出来上がるバランスを徹底して整えることで、見た目はとても綺麗な椅子に仕上げられています。
床から垂直に立ち上がる四本の真っ直ぐな脚は静寂な雰囲気を醸し出します。椅子単体でなく、他の家具と合わさった時にも乱雑な状況にはならないように、ひっそりと佇む控えめな存在の椅子がこのFOLLKE Ⅰです。
直線の脚とは対照的に背もたれは、二種類の異なる曲線で複雑に構成されています。大きくカーブした曲げ木の上段と、三時曲面のカーブになる削り出しで成形された下段。この二種類のカーブで背もたれに傾斜が付けられたような感触を錯覚させています。座り心地も非常に自然に感じられる快適に作られた椅子です。
また、作家の家具にしては安価に設定されているのも、この椅子の構想時からある根幹となっているテーマです。
家具にも木工という世界があることを知って関心を抱いてくれた人が、その価格の高さで怯んでしまわないくらいの、お求めいただける価格の椅子を作りたいという想いも託されている椅子です。一見すると拘りがないようなこの椅子ですが、作者の家具というものへの思想を正面から反映させた作品です。
普遍的であることの願いも込められて、民衆という意味を持つFOLKEと名付けられました。